「また教材か」で終わらせない
- 兵庫県が進めた“体験から始まる”情報モラル教育
2023年06月30日
対象:教育関係者向け
教材:GIGAワークブック

LINEヤフーみらいプロジェクトでは、学校や自治体で活用いただける情報モラル教材「GIGAワークブック」を公開しています。
前回のコラムでは、神奈川県鎌倉市で、教育委員会と学校が連携し、朝の15分を活用して情報モラル教育を進める事例をご紹介しました。
今回取り上げるのは、兵庫県教育委員会の取り組みです。
教材を用意しても、それだけで学校現場に広がるとは限りません。忙しい先生方にとって、新しい教材は「また増えた」と感じられてしまうこともあります。
では、先生方に「これなら使えそう」「授業で使ってみたい」と思ってもらうには、何が必要なのでしょうか。
兵庫県では、GIGAワークブックを研修動画や体験型の演習と組み合わせ、先生方自身が教材の良さを実感できる機会をつくっています。
教材を校内で広げたい学校の皆さまにも、これから情報モラル教材の導入を検討する自治体・学校の皆さまにも、活用のヒントとしてぜひご覧ください。
プロフィール - 話者の紹介
上田 剛(うえだ つよし)
兵庫県教育委員会 義務教育課。GIGAスクール構想下における兵庫県内の情報モラル教育を推進。「ひょうごGIGAワークブック」の導入・普及において、現場の視点に立った研修一体型の戦略を牽引。

1. 端末普及で激変したトラブルの質。「ルール制限」からの脱却
―― 1人1台端末が普及したことで、学校現場でのネットトラブルにはどのような変化があったのでしょうか?
上田氏:
クラウドサービスの利用が当たり前になったことで、従来のリーフレット配布だけでは防ぎきれない課題が見えてきました。
1人1アカウントのクラウドサービスの利用により、これまで難しかったデータの共有も容易にできるようになりました。こうした端末の活用が増えることに伴い、新たなトラブルが顕在化し、教育委員会だけでなく、学校、教員、児童・生徒、家庭と、それぞれが情報モラル教育の必要性を再認識しはじめました。
―― これまでの「禁止」や「制限」のルールだけでは対応が難しくなってきたのですね。
上田氏:
そうですね。そこで兵庫県が選んだのが、リスクを禁止するのではなく、上手な活用の仕方をセットで学ぶ「ひょうごGIGAワークブック」でした。

2. 【自治体の工夫】「また新しい教材か」と思わせない、研修とのセット導入
――新しい教材を現場に導入する際、多忙な先生方に受け入れてもらうためにどのような工夫をされたのですか?
上田氏:
情報モラル教材は他にも多くの機関で作成されているので、現場の先生にとっては「また教材か」と思われる方も多いかと思います。そのため、やはり教材をただ配るのではなく、「研修とのセット」で考えることが重要かと思います。
――具体的にはどのような仕組みで普及を進めたのでしょうか?
上田氏:
大きく2つのアプローチを行いました。まずは導線の工夫として、「兵庫県 教育の情報化サイト」という教育サイトに、教材の監修者である塩田准教授の講義や教材の説明動画を掲載しました。これにより、先生方が教材をダウンロードする際に、必ず研修動画が目に入るような仕組みを作っています。
――ダウンロードのアクションと研修を自然に結びつけたのですね。もう1つのアプローチはどのようなものでしょうか。
上田氏:
「体験型の演習」の実施です。実際の授業を想定したワーク(カードの並び替えなど)を、まずは先生方自身に体験してもらいました。
演習でカードを並び替え、隣と比較する活動の中で、自然に会話が生まれたり、隣の人との価値観のズレを感じたりと、参加した先生には、この教材の良さを実際に体感していただくことができました。「これなら簡単だし、授業で使ってみたい!」と自発的に思ってもらうための重要なプロセスです。


3. 教科の授業の「冒頭15分」で使える手軽さ
――現場の先生からは「情報モラルのために、わざわざ新しい授業時間を確保するのは難しい」という声も多そうですが、その点はいかがですか?
上田氏:
まさにその現場の悩みにも、この教材は応えています。普段行っている教科授業の「冒頭」に組み込むだけで、スムーズに活用が可能です。
――教科の授業の中で、どのように活用するイメージでしょうか。
上田氏:
例えば「どのように写真を撮ればよいのかな」というテーマでは、小学校4年生の「理科」の授業の冒頭での活用を想定して研修の演習を行いました。これにより、参加した先生方にも「これなら普段の教科の中で使える」という具体的なイメージを伝えることができました。
教科連携ができる「型」が最初から用意されているため、特別な準備なしで、どの先生でも簡単に始められるのが大きなメリットになっています。
4. トラブルを「自分事化」し、デジタル社会を生き抜く力へ
――実際に導入が進む中で、子どもたちにはどのような変化や価値が生まれていますか?
上田氏:
単にリスクを避けるだけでなく、インターネットの特性を理解して上手に使いこなす。そんな「生きた力」が子どもたちの中に育ち始めています。
この教材が提供する価値は、大きく2つあると考えています。
1つ目は「特性の理解」です。インターネットの良さと危険性を両面から学べます。
2つ目は「自分事化」です。カードワークを通じて、トラブルを『自分ならどうするか』と主体的に考えることができます。

まとめ:子どもたちの未来を支える「生きた教材」へ
兵庫県の事例は、教育委員会が「研修とセット」で体験の場を提供することで、現場の心理的ハードルを下げ、実効性のある情報モラル教育を展開できることを証明しています。
最後に、今後の展望について上田氏はこう締めくくりました。
上田氏:
「デジタル社会を生き抜くための視点でまとめられたこの教材を活用し、子どもたちが他者理解・自分理解を深め、より良いICT活用ができるよう支援を続けていきます」
LINEヤフー みらいプロジェクトでは、教員向けの研修動画をご用意しております。動画を再生しながら授業を進行いただくことも可能です。ぜひ一度、お試しいただけますと幸いです。
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教員向け研修動画 アドバンスト版(中・高校向け)
教材お申し込み(無料)
いかがでしたか? LINEヤフー みらいプロジェクトでは、自治体様の実践事例を通じて、より多くの皆様に教材の魅力や活用方法を知っていただき、教育現場での活用の輪を広げていければと考えています。
文:LINEヤフー みらいプロジェクト事務局
※本記事は、2023年に「LINEみらい財団(現:LINEヤフー みらいプロジェクト)」が兵庫県教育委員会と実施した取り組みをもとに、編集・作成したものです。
