コラム

SNSのすれ違いを、道徳の授業でどう扱うか
- 長崎市立小ヶ倉中学校の授業事例

2023年07月01日


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「GIGAワークブック」導入事例のご紹介神奈川県鎌倉市へ導入経緯や普及方法などを伺ったと記載のある画像

SNSやメッセージアプリでのやりとりは、生徒にとって身近なコミュニケーションである一方、言葉の受け取り方の違いから、思わぬすれ違いやトラブルにつながることがあります。

LINEヤフーみらいプロジェクトでは、学校や自治体で活用いただける情報モラル教材を公開しています。これまでのコラムでは、自治体や教育委員会による導入・普及の工夫として、鎌倉市や兵庫県の事例をご紹介してきました。

今回ご紹介するのは、実際の授業での活用事例です。

情報モラル教育というと、「やってはいけないことを伝える」「トラブルを防ぐためのルールを確認する」といったイメージを持たれることがあります。もちろん、基本的な知識やルールを伝えることは大切です。

一方で、SNSやメッセージアプリでのコミュニケーションでは、同じ言葉であっても、受け取る人や場面によって感じ方が大きく変わることがあります。

「そんなつもりではなかった」
「軽い冗談のつもりだった」
「相手がどう受け取るかまでは考えていなかった」

こうしたすれ違いは、生徒たちにとっても身近な問題ではないでしょうか。だからこそ、授業では「これは正しい」「これは間違い」と一方的に教えるだけではなく、生徒自身が考え、友だちの意見を聞き、自分とは違う感じ方に気づくことが重要です。

長崎市立小ヶ倉中学校で行われた中学2年生の道徳の授業では、情報モラル教材「GIGAワークブックながさき」を活用し、SNS上の文字のやりとりを題材に、生徒たちが「同じ言葉でも、人によって受け取り方が違う」ことを考えました。

事前アンケートでは、54%の生徒が「自分の気持ちが相手にうまく伝わらず『こんなつもりじゃなかったのに』と思った経験がある」と回答しています。つまり、このテーマは、生徒にとって決して遠い話ではありません。

本記事では、実際の教材スライドに沿って、授業の流れや生徒から出た意見、先生のファシリテーションのポイントをご紹介します。

すでに情報モラル教材をダウンロードいただいた学校や、関連教材を活用した出前授業を実施した学校の皆さまには、授業での具体的な使い方のヒントとして。また、これから情報モラル教材の導入を検討される自治体・学校の皆さまには、生徒の対話を引き出す授業づくりの参考として、ぜひご覧ください。

01
【導入の問い】グループトーク VS 個人トーク、危ないのはどっち?
02
【展開のワーク】日常の会話を「4つの天気」(気持ち)に分類する
03
【まとめの議論】「こんなはずじゃなかった」を防ぐために
04
授業を終えて:生徒たちの振り返り(本音の感想)
05
実践した高田先生からのアドバイス(教材のメリット)

プロフィール

授業実践校:長崎市立小ヶ倉中学校(中学2年生・道徳)

授業者:高田 壮史 先生

使用教材:GIGAワークブックながさき「アドバンスド(中高生向け)」より『こんなつもりじゃなかったのに』

1. 【導入の問い】グループトーク VS 個人トーク、危ないのはどっち?

 

最初のワークでは、全く同じメッセージであっても「伝える場所(シチュエーション)」によってリスクの感じ方がどう変わるかを考えさせます。

教材のお題: 「今日、たかしさんが教室の掃除してたね」 「たかしさんってまじめだよね」

先生からの問いかけ:「『クラス全員のグループトーク』と『たかしさんへの個人トーク』、トラブルが起こるリスクが高いのはどちらだと思いますか?」

担当職員のプレゼン画像

生徒たちのリアルなコメント:
この問いに正解はありません。生徒の回答は綺麗に分かれ、端末(タブレット)を通じて以下のような意見が飛び交いました。

ー「グループトーク」のほうがリスクが高いと考えた生徒

ー『まじめだということを全体に共有して、みんなでバカにしている(いじっている)ように感じる』

ー『たかしさんは、みんなの前で言われるのがはずかしいかもしれないから、グループは嫌だと思う』

ー「個人トーク」のほうがリスクが高いと考えた生徒

ー『個人的にわざわざ裏で言ってきたほうが、含みがあるというか、悪口っぽく聞こえる』

ー『グループだといろんな人の目があるから抑止力になるけど、個人だと1対1だから受け取り方が極端になりやすい』

先生のファシリテーションのコツ:
あえて正解を示さず、「どちらがトラブルになりやすいと感じるかは、人によって全く違うんだね」と受け止めることで、教室内を「人それぞれ違う」という良い意味でのモヤモヤ感で満たします。

2. 【展開のワーク】日常の会話を「4つの天気」(気持ち)に分類する

 

続いて、中学生の日常で本当にありそうな5つのグループトーク画面(テストの話題、部活の写真共有、カラオケの誘いなど)を見せ、その会話の後にどんな展開になるかを「天気」で予想・仕分けさせます

4つの天気予報

個人ワーク(75秒)で直感的に仕分けた後、4〜5人のグループに分かれ、「自分がなぜその天気に選んだのか、根拠となる言葉」をお互いの端末画面を見せ合いながら共有します。

晴れ 楽しい。うれしい。おもしろい。ほっとする。
くもり 特になにも起きない。このままと変わらない。
いらっとする。気まずくなる。悲しくなる。
カミナリ けんかする。怒り出す。泣く。炎上する。

グループワークで出た生徒たちの熱いコメント
同じ会話、同じ言葉に注目していても、生徒の価値観によって「天気」が真逆になる面白さが生まれます。

ー 部活の写真共有の会話を見て……

ー 『みんなが笑顔になるような言葉を書いているし、みんなも笑顔になっているから【晴れ】だと思う!』

ー 『いや、私はこの言い方、ちょっと仲間外れにされてバカにされているように感じる。だから【雨】か【カミナリ】じゃないかな』

ー「まじめだね」という言葉の受け止め方

ー『普通の褒め言葉だし、何も起きないから【くもり】でしょ』

ー 『言われ方によっては皮肉に聞こえる。私なら怒るから【カミナリ】にしました』

先生のファシリテーションのコツ:
先生は各グループを回り、「同じ文章なのに捉え方がネガティブとポジティブで真っ二つに分かれているケース」をいくつかピックアップし、黒板に貼り出して全体に共有します。「悪口じゃなくても、人によってはカミナリマークになるんだ」と生徒自身に気づかせることがポイントです。

3. 【まとめの議論】「こんなはずじゃなかった」を防ぐために

 

――人によって感じ方が違うことを体感した上で、最後の問いを投げかけます。

人によって感じ方が違うことを体感した上で、最後の問いを投げかけます。

先生からの問いかけ 「『こんなはずじゃなかった』と、相手を傷つけたりケンカになったりしないために、私たちはこれからどうしたらいいと思う?」

授業の結びに出た生徒たちのコメント

ー『相手と自分の感情が違うのは当たり前のこと。だから、まずはその違いを受け止めるのが大事だと思う』

ー『もし自分がメッセージを読んで嫌な気持ちになったときは、溜め込まずにちゃんと(言葉で)伝えたほうがいい』

ー『自分が悪気なく言ったことで相手が怒っちゃったときは、言い訳せずにすなおに「ごめんね」と言うことが大切だと思った』

4. 授業を終えて:生徒たちの振り返り(本音の感想)

 

45分の授業の最後に、生徒たちが端末に入力した振り返りの声です。

ー 『実際のLINEみたいな画面を使ったから、すごくイメージが湧いてわかりやすかった』

ー 『最初は難しかったけど、クラスのみんなの意見を聞いたら、同じ文章でも人によってこんなに感じ方が違うんだと驚いた』

ー 『人によって受け取り方が全然違うので、これからスマホで連絡するときは、相手がどう思うかを一歩立ち止まって考えてから送信するようにしたいです』

5. 実践した教員が感じた教材のメリット

講義を行なった高田先生が感じた教材のメリットをお話いただきました。道徳の授業で活用できるポイントとしてご紹介します。

 ー 日常に即した高い親近感が生徒の興味関心をひく

ー 道徳の教科書に登場する人物は、立派すぎて子どもたちにピンと来ないことも多い。しかし、この教材は子どもたちが日々出会いそうな場面に即しているため、親近感や切実性が生まれやすく、他の教科に比べて話し合いが圧倒的に活発になる

ー 考え、議論する道徳へのマッチング

ー 従来の「自転車の事故の処罰はこう」といった行動規範の押し付けではなく、問題解決的な視点を与えてくれる教材です。授業の流れがしっかり構築されているので、先生方はその枠組みを使って、子どもたちの意見のズレをアレンジしながらファシリテートするだけで深い授業が作れる

今回ご紹介した教材は以下になります。教材の詳細は以下よりご確認いただけます。
また、教員向けの研修動画を再生しながら授業を進行いただくことも可能です。ぜひ一度、お試しいただけますと幸いです。

活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」アドバンスト版

教員向け研修動画 アドバンスト版(中・高校向け)

いかがでしたか? LINEヤフー みらいプロジェクトでは、自治体様の実践事例を通じて、より多くの皆様に教材の魅力や活用方法を知っていただき、教育現場での活用の輪を広げていければと考えています。

文:LINEヤフー みらいプロジェクト事務局

※本記事は、2023年に「LINEみらい財団(現:LINEヤフー みらいプロジェクト)」が
長崎市立小ヶ倉中学校と実施した取り組みをもとに、編集・作成したものです。