コラム

"調べて発表"で終わらせない
――授業に「考える時間」と「見取る目」を

2026年07月28日

対象:教育関係者向け
教材
GIGAワークブック


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児童たちがタブレットやカードを机に広げて情報を整理し、先生がそばで見守っている教室のフラットイラスト

GIGAスクール構想から数年、教室で端末を使うことは、もはや特別な光景ではなくなりました。「調べる」「記録する」「発表する」――これらの活動は日常のなかにすっかり定着しています。

一方で、現場で先生方とお話しするなかで、こんな声をしばしば伺います。「授業では確かに端末を使っている。ただ、"使わせている"のと"学びが深まっている"のは、同じことなのだろうか」。

本稿では、私たちみらいプロジェクトが実施した調査結果と、監修者である明星大学 教育学部 今野貴之教授のご提言をふまえ、これからの授業設計と、教師の"見取る目"について、私たちなりに考えたことをお伝えします。

01
「調べる」「記録する」「発表する」に偏りがちな端末活用
02
抜け落ちがちな「整理・分析」の時間
03
「振り返りを書かせること」が目的化していないか
04
「推奨されたから使う」で止まらない、教材を見極める目
05
みらいプロジェクトが、これから大切にしたいこと
06
おわりに:授業を支えるのは、教師の"見取る目"

01. 「調べる」「記録する」「発表する」に偏りがちな端末活用

 

GIGAスクール端末の活用状況 活用用途のグラフ。小学校と中学校における調査データを表示

私たちが2025年10月から2026年1月にかけて、GIGAワークブック導入校の教員・管理職399名に実施した調査では、平日のうち週4日以上GIGAスクール端末を活用する教員が、小学校で約58%、中学校で50%と、半数を超えました。授業のなかで端末を使うこと自体は、もう当たり前のことになっています。

一方で、活用の中身を見ると、用途にははっきりとした偏りがあります。
・調べ学習:小学校 約83%/中学校 84%
・動画や写真による記録:小学校 約80%
・発表・プレゼンテーション:中学校 73%
・生成AIの活用/学習管理システムの運用など、学習支援的な用途:最大でも20%程度
社会科の学習をイメージすると、この分布は自然に見えます。テーマを決めて調べ、写真や動画で記録し、スライドにまとめて発表する。そうした流れは、端末やインターネットと相性がよく、活用の入り口としても取り組みやすい。実際、多くの教室で、こうした学習が繰り返されているはずです。

ただ、この分布のなかに、少し立ち止まって考えたい"あいだ"があります。

出典:LINEヤフー株式会社「GIGAスクール端末および情報モラル教材の活用状況と効果、教員意識に関する調査報告書」(2026年7月)p. 19

02. 抜け落ちがちな「整理・分析」の時間

児童2人が大きな比較表の上でカードを動かしながら情報を整理・分析し、先生がそばで穏やかに見守っている教室のイラスト

今野貴之先生は、提言のなかで次のように指摘されています。
「端末で「調べる」「記録する」「発表する」活動は日常化しているが、情報活用能力の育成で最も見落とされやすいのは、「情報を集める」と「発表する」の間にある「整理・分析」の段階である。学習の最後に発表を見通すことは重要だが、きれいなスライド作りに没頭してしまい、集めた情報を吟味しにくい状況になりがちである。(今野貴之教授・提言より)」
集めた情報を、比べる。分類する。関連づける。矛盾点を探す。――こうした思考の時間は、端末のなかだけでは自然発生しにくいものです。スライドの体裁を整えるのに気を取られていると、いつの間にか"集めたものを、そのまま並べて発表する"だけの活動になってしまう。

だからこそ、収集と発表の"あいだ"に、思考の時間を意図的に組み込む必要があります。
・複数の情報源を一枚の表に並べて、どこが一致し、どこが食い違っているかを探す
・付箋やカードを動かしながら、分類の基準を自分たちで決めていく
・「一番大事なのはどれか」を、根拠を挙げて仲間と議論する
ICTは、情報を集める道具であると同時に、思考の過程を可視化する道具でもあります。「調べる」から「発表する」への一直線ではなく、そのあいだに"考える時間"を挿し込む授業設計こそが、いま最も問われているのだと、私たちも感じています。

03. 「振り返りを書かせること」が目的化していないか

もう一つ、注意深く考えたい問いがあります。

主体的な学びを促すはずの活動が、「計画表を書く」「振り返りカードを書く」「目標を書く」といった手続きに置き換わり、形だけが回っていく――そんな危険は、教室のあちこちに潜んでいます。

今野先生は、この点についても率直に指摘されています。
「主体的な学びを促すはずの活動が、振り返りを書かせる手続きに置き換わり、形だけが回る危険性がある。本質を欠いたまま方略が回ると、学びは「教師に合わせる作業」となり、学んでいるように見える記録を量産してしまう。教材を使えば自動的に学びが深まるわけではない。(今野貴之教授・提言より)」
書かせれば、学んでいるとは限りません。子どもたち一人ひとりが、本当に課題を理解し、方略を選び、意味のある調整をしているのか――その問いを持ち続けなければ、記録は「教師が求める形に合わせる作業」の産物になってしまいます。

私たちの調査でも、約94%の教員が「対話や協働、課題解決を伴う学習は、学習成果を高めるうえで重要」と答えています。この意識の高さは、日本の教育の底力そのものだと感じます。だからこそ、その意識が"手続き"に飲み込まれてしまわないよう、記録の有無だけではなく、授業者自身を含めた学級・学年の関係がどう動いたかを見取る目が、いま強く求められています。

04. 「推奨されたから使う」で止まらない、教材を見極める目

先生が正面の机に並んだ教材冊子を見比べ、背景では児童たちが学習に取り組んでいる教室のイラスト

もう一点、教材の選び方についても触れておきたいことがあります。

私たちの調査では、GIGAワークブックの活用理由として、「教育委員会からの推奨があったから」が40%近くと上位に入りました。よい教材が現場に届く回路として、こうした推奨制度は歓迎すべきものです。ただ、同時に注意したい側面もあります。

多忙な現場では、推奨された教材を"内容を吟味する時間がないまま"使い始めることも少なくありません。ここで大切になるのが、目の前の子どもたちに、いまその教材が本当に必要なのかを見立てる目です。

すでに起きている問題への「処方箋」として使うのか。これから起きうる問題への「予防」として使うのか。同じ教材でも、その位置づけによって授業の設計は変わります。「まずやってみる」こと自体は悪くありません。ただ、なぜ・いつ・誰に使うのかを見立てないまま形式的に流してしまうと、教材の力を十分に引き出すことはできません。

教材は、あくまで"道具"です。その道具を、誰に・いつ・なぜ使うのかを見立てるのは、先生方の専門性の核心にあたる部分だと、私たちは考えています。

05. みらいプロジェクトが、これから大切にしたいこと

こうして調査結果と提言を受け止めるなかで、私たちみらいプロジェクトが改めて自らに問い直していることがあります。

 それは、教材を届けることそのものが目的ではない、ということです。

 私たちがお届けしている教材は、収集と発表のあいだに"考える時間"を持ちたい先生、記録の手続きだけに終わらない学びを設計したい先生、目の前の子どもに合わせて教材を使い分けたい先生――そうした先生方の実践を、少しでも支えるための道具でありたいと思っています。指導案や手引きも、"型のとおりに進めるためのマニュアル"ではなく、"先生方が目の前の子どもに合わせて調整するための土台"として設計してきました。

教材を選び、組み合わせ、使い方を判断していく先生方の営みそのものが、子どもたちの学びを深めていく――その事実を大切にしながら、これからも現場の実感に耳を澄ませて、教材と支援のあり方を模索し続けたいと考えています。

おわりに:授業を支えるのは、教師の"見取る目"

端末は、教室に十分に行き渡りました。教材も、たくさんの選択肢のなかから選べる時代になりました。ハードウェアと教材が揃った今、授業の質を最後に決めるのは、先生方の"見取る目"です。

 「何を経験させたいか」「学級の関係をどう動かしたいか」――この問いを持ち続けている先生の授業では、同じ教材が、まったく違う深さの学びを生みます。

私たちみらいプロジェクトも、そうした先生方の営みに少しでも並走できるよう、これからも現場の声に耳を傾け、教材と支援のかたちを一緒に育てていきたいと思っています。

ご参考:無償教材のご案内

「活用型情報モラル教材 GIGAワークブック」では、演習や対話を軸にした授業案・指導案を、指導のねらいとあわせて掲載しています。どなたでも無償でダウンロードいただけます。

文:LINEヤフー みらいプロジェクト事務局