「先生、ほかの家では何時間ですか?」子どものスマホ利用を、時間だけで決めないために
ー 利用時間の相談から、子どもの生活と使い方を家庭と学校で一緒に見る
2026年11月04日
対象:教育関係者向け、保護者向け
教材:GIGAワークブック

「動画ばかり見ているのですが、ほかの家では何時間くらいですか」
「スマートフォンで何を見ているのか、親もよく分かっていません」
「フィルタリングは、どこまで設定したらよいのでしょう」
「ルールを決めても守ってくれません。ごほうびに使わせるのもよくないでしょうか」
「プログラミングや生成AIは学びにもなると思うのですが、遊びとの区別がつきません」
家庭でこうした疑問を抱いたことのある保護者も、個人面談や保護者会などで相談を受けたことのある先生もいるのではないでしょうか。
どれも子どものIT利用についての相談ですが、心配の中身は少しずつ違います。利用時間、閲覧内容、安全、親子のやりとり、そして学びへの期待。いくつもの迷いが、「スマホが心配」という一言に重なっています。
家庭で使うスマートフォンのことなら、利用時間やルールを決めるのは家庭の問題ではないかそう見えるかもしれません。
けれども、夜遅くまで使えば翌朝の登校や授業に影響することがあります。友達とのやりとりや、学校で覚えた端末の使い方は、家庭での利用ともつながっています。
子どもの生活は、家と学校できれいに分かれているわけではありません。
だから保護者は、どこまで家庭で決め、何を学校へ相談してよいのか迷います。先生も、家庭のしつけにどこまで関わるべきか、学校として何を伝えられるのか悩みます。簡単に線引きできないからこそ、保護者も先生も困るのではないでしょうか。
保護者が家庭だけで答えを見つける必要はありませんし、先生がすべての家庭に一つの正解を示したり、ルールづくりまで背負ったりする必要もありません。「家庭の問題」「学校の問題」と切り離さず、何を不安に感じているのかを一緒に整理し、家庭と学校で見えている姿や公的な情報をつなぐことはできます。
今回は、その中でも多くの家庭が気にする「利用時間」の相談から、家庭で考える手がかりと、学校が相談を受けたときに返せることを、両方の立場から考えます。
01. 「ほかの家では何時間?」と聞きたくなる
子育てに一つの正解がないと分かっていても、「ほかの家ではどうしているのだろう」と気になるのは自然なことです。
自分の子どもだけが長く使っているのではないか。注意の仕方が甘いのではないか。反対に、厳しくしすぎて、学ぶ機会まで狭めていないか。比べられる数字があれば、判断しやすくなるように感じます。
学校へ尋ねたくなるのも、家庭のルールを決めてもらいたいからとは限りません。「このままで大丈夫でしょうか」という不安を、子どもを別の場所でも見ている大人と共有したい気持ちが含まれていることもあります。
ですから、最初から「家庭ごとに違います」と答えを閉じるより、まずは「気になりますよね」と受け止める。そのうえで、数字を家庭の採点表ではなく、子どもの生活を一緒に見る入口として使うことが大切です。
02. 平均は約3時間54分。でも、それが「適切な時間」ではない

こども家庭庁の「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」では、インターネットを利用している10歳以上の小学生の平日1日あたりの平均利用時間は、約3時間54分でした。3時間以上利用している割合は61.7%、5時間以上は28.8%です。集計対象は847人でした。(※1)
家庭で利用時間を考えるときにも、学校で相談を受けるときにも、こうした全国調査の数字は一つの参考になります。ただし、この約3時間54分は、スマートフォンだけではなく、調査対象となる複数の機器の利用時間を合計したものです。動画、ゲーム、家族や友達との連絡、勉強など、異なる目的の利用も含まれています。また、調査で分かるのは利用の実態であって、守るべき推奨時間ではありません。
たとえば、同じ2時間でも、宿題を調べ、友達と連絡し、動画を見た2時間と、寝る直前まで動画を見続けた2時間では、生活への影響が違います。数字だけを比べても、その子に何が起きているのかまでは分かりません。
家庭と学校で話すときには、たとえば次のような言葉から始められます。
「最新の全国調査では、10歳以上の小学生の平均は約3時間54分でした。ただ、これは複数の機器を合計した利用実態で、推奨時間ではありません。平均との差だけでなく、睡眠や宿題など、お子さんの生活に何が起きているかも一緒に見てみませんか」
平均を知ることで、「わが家だけではない」と少し安心できることはあります。その安心を、平均に合わせるためではなく、目の前の子どもを見る余裕へつなげたいところです。
03. 「何時間か」と一緒に見たい、三つのこと

利用時間を考えるときには、時間とともに、次の三つを見てみると心配の中身を整理しやすくなります。
・何を、何のために使っているか
動画、ゲーム、検索、創作、連絡、学習。同じ画面を見ていても、子どもがしていることは一つではありません。まずは、長く使っている時間の中身を知ることで、「動画の終わりどきをつくりたい」「友達との連絡方法を考えたい」など、話し合うテーマが見えてきます。
・使ったあと、生活に何が起きているか
睡眠、食事、宿題、登校、家族との会話、外で遊ぶ時間。どこかに具体的な影響が出ているかを見ます。「長いから心配」を、「朝起きられないことが心配」「やめるときに毎回けんかになる」と言い換えられると、試すことも選びやすくなります。
・区切り方を考え、相談できているか
決めた時刻に必ず終われるかだけでなく、終わり方を相談できるか、困る画面やメッセージに出会ったときに大人へ伝えられるかも大切です。管理の強さだけでなく、子どもが少しずつ自分の使い方を振り返り、必要なときに助けを求められる関係を育てる視点です。
旧LINEみらい財団が2023年に全国の教員と保護者各1,000人を対象に行った調査のまとめでは、学校と家庭の双方で8割近くが情報モラル教育に高い意識を持ち、長時間利用など主なトラブルへの問題意識も近いことが示されています。(※2)
日本財団ジャーナルの取材記事では、この調査について、情報モラルに関して個別指導が必要になった問題のうち、「スマホの長時間利用による生活の乱れ」が最も多かったと紹介されています。長時間利用は、家庭だけの小さな悩みではなく、学校でも向き合ってきた課題です。(※3)
一方、同じ記事で紹介されている授業では、「何時間から使いすぎか」に一つの正解を置かず、子ども同士で感じ方の違いを話し合い、自分の利用状況と向き合います。また、スマホ以外に夢中になれる時間を一緒に探すという見方も示されています。「減らすにはどうするか」だけでなく、その時間の中身や、使わない時間の過ごし方まで見る。そこから、制限とは別の対応が見えることもあります。(※3)
04. 家庭と学校は、どこまで関わればよいのか
保護者は、「家庭のことを学校へ相談してよいのだろうか」と迷うことがあります。先生も、相談を受ければ何か明確な答えを返さなければと感じる一方で、「家庭で使っている端末のことまで、学校が答えるのだろうか」と戸惑うことがあるでしょう。
学校が家庭の生活時間や端末設定を決める必要はありません。しかし、家庭の問題として切り離してしまうと、授業中の様子、友達との関わり、朝の体調など、学校だから見える手がかりが共有されないままになります。
ここで必要なのは、どちらかが正解を決めることではありません。家庭からは心配していることや生活の様子を伝え、学校からは不安を整理する問いと、学校で見えている子どもの姿を返す。そうすることで、一方だけでは見えなかった手がかりが増えます。
学校から家庭へは、たとえば次のように尋ねられます。
・「長く使うことで、睡眠、宿題、食事、家族との会話のうち、何にいちばん影響が出ていますか」
・「お子さんは、主に何をしている時間が長いのでしょう」
・「使っている内容が心配ですか。それとも、終わるときに困ることが多いですか」
家庭から学校へ確かめられることもあります。
・「学校では、授業中の切り替えや友達とのやりとりに、気になる変化はありますか」
・「学習で端末を使うときには、どのようなことを大切にしていますか」
相談の場では、家庭での話に加えて、学校で実際に見えていることも確かめます。
「授業中は端末から切り替えられています」「最近、朝に眠そうな日があります」「調べ学習では、目的を持って使えています」。良い面も気になる面も、評価ではなく事実として伝えることで、家庭だけでは見えなかった材料が増えます。
相談の流れは、受け止める、心配を一つに絞る、家庭と学校で見える姿をつなぐ、試すことを一つ選ぶ。この順序で考えると、先生が家庭のしつけを背負わず、保護者も家庭だけで抱え込まずに、相談へ向き合いやすくなります。
もちろん、睡眠や登校への大きな影響、課金・犯罪被害、深刻な心身の不調などが疑われる場合は、一般的な利用時間の相談とは分けて考える必要があります。担任一人で抱えず、養護教諭、管理職、スクールカウンセラーや関係機関へつなぐことも、学校ができる大切な対応です。
05. まず、どこから始める?

利用時間の相談を、すぐに大きなルールづくりへつなげなくても構いません。同じことを家庭と学校の両方で行う必要もありません。それぞれに見える場面から始め、気づいたことを共有できます。
・一週間だけ、「時間の中身」を見てみる
家庭では、一週間、利用時間に加えて「何をしていたか」「使ったあと、どんな様子だったか」を一つだけ記録してみます。細かく監視するためではなく、心配していることを具体的にするための記録です。
・終わり方のルールを、一つ決める
「一日○分」だけでなく、「食事の前に終える」「寝る場所には持ち込まない」「終わる10分前に知らせる」など、生活の場面と結びつけます。ルールを増やすより、一番困っている場面から一つ試し、一週間後に続けられそうかを親子で見直します。
・学校で、感じ方の違いを話してみる
「何時間から使いすぎだと思う?」と問いかけると、子どもによって答えは変わります。その違いを正誤で分けず、「なぜそう思うのか」「生活にどんな影響が出たら見直したいか」まで話すことで、自分の使い方を振り返る学びになります。
既存教材を使う方法もあります。旧LINEみらい財団から続き、現在はLINEヤフー みらいプロジェクトが無償提供している「GIGAワークブック」には、小学校4~6年生向けの「使いすぎていないかな」という教材があります。時間の使い方に着目し、子ども自身が生活を整える力を育てる内容で、15分の短時間でも取り入れられます。(※4、※5)
これは、特定の教材を使うことが答えという意味ではありません。所属する自治体や教育委員会が提供する教材も含め、学級の子どもたちに合うものを一つ選ぶことができます。保護者から相談があったあと、学級全体で時間の使い方を考える小さな機会をつくることも、学校からできる返し方です。
06. 「家庭か、学校か」ではなく、両方から見てみる
子どものIT利用について、どこまでを家庭が担い、どこからを学校が担うのか。きれいに線を引くのは簡単ではありません。
家庭には、休日や就寝前の様子、親子でルールをめぐって交わした言葉が見えます。学校には、授業での端末の使い方、友達との関わり、学習や生活の変化が見えます。どちらか一方の姿だけでは、その子の利用全体を捉えきれないことがあります。
だからこそ、「家庭で解決してください」「学校で教えてください」のどちらかへ寄せるのではなく、それぞれに見えていることを持ち寄ることに意味があります。
線引きが難しいことは、責任の所在が曖昧だということではありません。家庭には生活の中でできることがあり、学校には学びや集団生活の中でできることがあります。役割は同じでなくても、目指す先を共有することはできます。
保護者にとって、ほかの家庭が気になるのは自然なことです。ただ、平均や隣の家のルールを知ることは、考える入口にはなっても、そのままわが家の答えにはなりません。最後に見たいのは、目の前の子どもが何に時間を使い、そのことで生活や学びに何が起きているかです。
先生も、家庭の正解を決める必要はありません。まず不安を聞き、学校で見えている姿を伝え、親子で試せることを一つ一緒に考える。それだけでも、保護者の「どうしたらよいか分からない」は、少し具体的な問いへ変わります。
家庭で時間の中身を一週間だけ見てみる。相談の場で、いちばん心配なことを一つ確かめる。学校で、時間の使い方を考える短い活動を取り入れる。始め方は一つでなくてよいのだと思います。
家庭で見える姿と、学校で見える姿を持ち寄る。両方の視点から子どもの使い方に向き合うことが、時間だけに振り回されず、子ども自身がデジタルとの付き合い方を考えていくための一歩になるのではないでしょうか。
注釈・参考資料
· ※1 令和7年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」調査結果(概要)|こども家庭庁(PDF)(外部サイト)
· ※2 GIGAスクール構想における情報モラル教育の実状等に関する調査報告書|LINEヤフー みらいプロジェクト
· ※3 スマホ時代、子どもに必要な情報モラルとは?|日本財団ジャーナル(2025年1月7日)(外部サイト)
· ※4 「使いすぎていないかな」|GIGAワークブック for Teachers
· ※5 活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」|LINEヤフー みらいプロジェクト
文:LINEヤフー みらいプロジェクト事務局
